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2024.04.01

機械式時計市場の変遷(2010年代)

引き続き、時計市場の変遷について、

2010年代でございますが、やはり節目ではパテックフィリップが話題の中心になりまして、前年の2009年にスターン家から4代目となるティアリー社長へと代替わり致しまして、

自社検査規格であるPPシールへと切り替わり、完全に世代交代となりまして、

2006年に史上初の自動巻き式クロノグラフキャリバーを発表後、

意匠も今までのクラシカルな路線から、モダンな弧状のデジタル窓表示の年次カレンダーやインスタンティニアス式の永久カレンダー搭載機を筆頭に新世代を思わせる革新的な

デザインが続々と増えて参りました。

中でも花形であった手巻き式クロノグラフのラインナップが、フィリップ名誉会長時代の

レマニアベースモデルが全て完結して、総入れ替わりとなりました。

レディーファーストクロノグラフRef.7071から始まり、クロノグラフRef.5170、

永久カレンダー搭載クロノグラフRef.5270、永久カレンダー搭載スプリットセコンドクロノグラフ5204と完全自社設計の手巻き式クロノグラフキャリバーとなり、

フルモデルチェンジして、基本性能の向上と共に完全自社設計に切り替わった事による強みで、派生モデルとして単体スプリットセコンドクロノグラフRef.5370が誕生致しました。

この世代交代の先にメモリアルイヤーである2014年に創業175周年を迎えますが、

かつて、先代のフィリップ名誉会長時代の創業150周年以来、25年振りのお祭りでございますが、大変な盛り上がりでございました。

10年前の出来事でございますが、改めて当時を振り返りますと

私もこれ程までの規模感と厳かな様相のビッグイベントが初経験でございましたが、

明治神宮外苑の聖徳記念絵画館を時計メーカーとしては史上初めて、

全館貸し切りにされて、スイス本国のミュージアムピースの特別展示と

特設テントによる現行ピースの展示及び商談エリアに区分けされた催しは正に完璧で、

鳥肌が立つ様な感動を今でも鮮明に記憶に残っておりますが、今後経験出来ないレベルの伝説的な周年イベントでございました。

それだけ、ヨーロッパ文化においてのクォーターアニバーサリーは扱いが別格で、

他ブランドでも同様に特別なイベントを行ないますが、パテックフィリップは次元が異なり、質量ともにこの四半世紀の積み重ねた物があまりに大きく、改めて世界最高であることを再認識致しました。

限定モデルは6型、グランドマスターチャイムRef.5175、ジャンピング・ストライキングタイムRef.5275、ワールドタイムムーンRef.5575、7175、自動巻きクロノグラフRef.5975、4675でございますが、中でも数年前にリリースされた10日巻トゥールビヨン レアハンドクラフトRef.5101/100をご紹介させていただきます。

特に数量限定ではございませんでしたが、Ref.5175と同様に外装ケース、リューズ、

時分針に伝統的なアラベスク模様の全面エングレービング(彫金)を施しております。

角型ケースの表面、裏面、針に至るまで余すところなく、荘厳の意匠で圧倒されます。

パテックフィリップの創業175周年の2014年の前年の2013年には、

ジャガールクルトの創業180周年でございました。

幸いにもスイスでのガラパーティに出席させていただく機会をいただきまして、

その軌跡を振り返ってみたいと思います。

元来、機械構造の供給専門メーカーとして、一時期はAP社の子会社を経て、

リシュモングループへの傘下へと資本が変わったのを機に自社製品へ注力する方向へと

シフトして変貌を遂げました。

当時のCEOジェローム・ランベール氏の指揮の元、2004年のジャイロトゥールビヨン1のリリースで業界に衝撃を与えて、ジャイロトゥールビヨンと共に新機構である2つの香箱でもそれぞれが干渉せずに別々の動力として機能させるデュアルウイングを搭載するデュオメトルシリーズは今までに存在しない新たな躯体構造として、画期的でございました。

定期的にグランドコンプリケーションをリリースしていくハイブリス・メカニカシリーズを定着化させていき、この2013年のメモリアルイヤーに合わせて、ランベール氏の集大成とも言うべき、大作ジャイロトゥールビヨン3ジュビリーをリリース致しました。

世界限定75本、エクストラホワイトプラチナ製、3作目のジャイロは、

フライング・ジャイロトゥールビヨンとして、過去の2作品とは異なり大きい開口部から

ジャイロトゥールビヨンキャリッジは正に惑星が宇宙空間に浮かんでいる様な演出を施していて、非常に繊細な14Kブルーイングゴールド製テンプが美しく映えております。

この球体2軸トゥールビヨンの軌道スピードは1分間に1回転の低速と24秒で1回転の高速と2種類の変則回転が織りなす至高の美しさですが、これを実現させている要素が、

超軽量素材アルミニウムを採用する事により、100個で構成されるキャリッジ全体の重量が1グラムにも満たない点でございます。

文字盤はベースのゴールド地板部分に特殊工具で打痕による手法で仕上げていく、

A.ランゲ&ゾーネのハンドヴェルクスクンストと同様の手仕事で施される仕様で、

レイアウトはジュウ渓谷の伝統的な意匠とも申し上げるべき、オフセンターで

12時側に時分表示、3時側にナイト&デイ表示、そして9時側にデジタル表示式瞬転切替モノプッシャークロノグラフの秒針及びデジタル表示分積算計を配置しております。

2時位置のプッシュボタンのみで操作するクロノグラフでございますが、

大型窓の分積算計の切り替わりはマジックの如き瞬間芸でございます。

フライング・ジャイロトゥールビヨンと共に機構としては非常に難易度が高く、

高トルクなクロノグラフを搭載しておりまして、180周年最高のプレミアムモデルに

相応しい技術力が発揮されております。

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