2016年に発表されたオーヴァーシーズの第3世代コレクションで革新と画期的なインターチェンジャブルシステムにより、
ブレスレット及び2種類のストラップを気分やTPOに合わせて、オーナー様自身で自由自在に付け替えが可能になり、より若年層も含めた多くの方の支持を得ました。
このインターチェンジャブルシステムは、今や同メゾンが傘下に入るリシュモングループ全体のグループ共有ブレスレットシステムとして、カルティエやジャガールクルト等にも
同様の仕様で製作されており、業界全体に与えたインパクトは絶大でございました。
そのオーヴァーシーズコレクションに2017年に追加発表された自社設計生産のcal.1120QP/1が搭載されている永久カレンダーでございます。センターローター自動巻き式の極薄4.05mmは、永らく時計界を代表する最高峰薄型自動巻きの基幹ムーブメントとして、有名な名機でございまして、ルーツはラグジュアリースポーツのパイオニアである
1972年発表のAP初代ロイヤルオーク“ジャンボ”Ref.5402に搭載されていたcal.2121Cでございますが、その4年後の1976年にはPP初代ノーチラスRef.3700がcal.28-255Cを
搭載しております。そして、VCとしては後発となりますが、1977年に創業222周年を
記念した通称“222”ことRef.44018にこのcal.1120が搭載されております。
当時はオーヴァーシーズではなく、この“222”による製作でございました。
(初代オーヴァーシーズは約20年後の1996年発表でございます。)
この1970年代の最高峰ウォッチメーカー3社による巴戦(若貴兄弟と曙を想起、デザイナーが共通の若貴がPPAPで、曙がVCでしょうか)ともいうべき、ラグジュアリースポーツ時計の仁義なき戦いは、3社共通するベースムーブメントジャガールクルト(JLC)社製cal.920によって、もたらされました。
当時のエボーシュメーカーとして、スイス時計業界の縁の下の力持ちというべき、
偉大なジャガールクルトによる製作ムーブメントを各々でモディファイして、
発表されておりますが、AP社と共にVC社も現在まで約半世紀もの長きに渡って、
このcal.1120を継続製作しております。
1970年代はシンプルな2針モデルから、現代機は今回ご紹介のパーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)搭載モデルに重点を置かれております。
元々の完成度の高いJLC社製cal.920は秒針を廃した仕様のムーブメントの薄型自動巻きで、パーペチュアルカレンダー及び複合するカレンダー機構との相性が良く、
数々の名機が誕生しておりますが、特に本モデルはVC社の卓越したアイデアと芸術的、
美的なセンスの塊で、AP社、JLC社と共に研鑽を積んできた複雑時計製造のメッカ、
ジュウ渓谷の一角での製造に特化されたスケルトナイズの製作は、
マルタコレクションやトラディショナルコレクションでも見られた仕様でございますが、
絶妙なムーブメントの配列において、カレンダー機構歯車の切り替え時の可動状態を視覚的にお愉しみいただける仕様でございます。
この華美なスケルトナイズ技術とスポーティな実用モデルとしての両立する製作哲学は、VC社独自のものですが、超複雑機構と超絶手技によるスケルトナイズ技巧は、
ジュウ渓谷の時計製作の歴史の一部でもございます。